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大名行列を再現する『柳井天神春祭り』。柳井天満宮から白壁通りを抜ける動く歴史絵巻

【柳井市町並み資料館】

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REA編集部

塚田

4月21日と22日の2日間にわたって柳井天神春祭りの取材に行ってきました。柳井天神春祭りは、江戸時代の大名行列を忠実に再現したもので、柳井天満宮を発進して近世の街並みが残る白壁通りを行列が通っていく様は、まさに動く歴史絵巻の様相を呈していました。

金魚ちょうちんが飾られる柳井市白壁通りで春祭り


江戸時代の豪商の屋敷が今も残る柳井白壁通り

山口県の東側に位置する柳井市は白壁の街並みで有名です。


その白壁の通りも通る平安・室町・江戸時代の行列を再現した柳井天神の春祭りが4月21日に前夜祭が、22日に本祭が行われたので取材してきました。


前夜祭にあたる夜参り行列は夜の7時から白壁通りから柳井天満宮へ、日中に行われる大名行列は昼の1時から今度は逆に天満宮から白壁通りへと、市中を進みながら再び天満宮へと戻っていきます。


柳井天満宮の由緒は、元禄二年に貞末宗故が大阪の天満天神に参詣した時菅原道真公の木像を拾って持ち帰り、元禄十年に安置したと伝えられています。


そのため防府天満宮と同じく、梅紋を紋印にしている由緒ある天満宮です。


柳井の白壁の町並みは中世からの町割りがそのまま今日も生きていることで貴重なものです。


これは大戦期の空襲を受けなかったことが一つの理由です。


通りは約200mほどあり、両側に江戸時代の商屋の家並みが続いています。


柳井市の観光協会の説明によると、藩政時代には「岩国藩の納戸(なんど)」と呼ばれ、産物を満載した大八車(だいはちぐるま)が往来してにぎわった町筋です。


昭和59年には通り全体が国の重要伝統的建造物群保存地区になりました。


町家としてわが国で残っているものとして最大のものともいわれるのが、小田家が営んでいた油屋の屋号「室屋(むろや)」の名前を冠した「むろやの園」です。


室屋は今からおよそ300年前、織田家の家臣であった小田善四郎が柳井津で起こしたのが始まりで油屋として栄え、その後は地主として栄えました。


小田家博物館の説明によれば、最盛期には50~125石船を50艘も抱え、西は九州から五島列島、東は大阪と商取引を行い、西日本でも有数の油商人として活躍したのです。


そのため4代目六左衛門の代では、岩国藩主から帯刀を許され、士分にまで取り立てられたのです。


むろやの園は南北に細長く119mもあり、長い白壁が柳井駅の方向に続いています。


江戸中期の屋敷構えがそっくりと残っている貴重な屋敷なので、柳井を訪れた際はぜひお立ち寄りください。


もうひとつ江戸時代中期、18世紀後半に建てられた豪商の家が重要文化財にも指定されている「国森家住宅」です。


国森家を訪れるとスタッフの方が丁寧に紹介してくれました。


この屋敷のみならず白壁通りにある建物は普通の屋敷とは違って土蔵(どぞう)造りになっています。建物の外壁を分厚い白壁(幅約25cm)が覆っている造りになっており、これは隣接する建物群の延焼から建物を守るためのものです。


この屋敷の建築学的に特異な点は2階の骨組みにあります。内部に四天柱状に通し柱を立て、厨子二階には二重梁式の和小屋を組む構造になっています。


商家としては大きな建物で、かつ土蔵造りの重厚な壁を支えるために、本来たとえば城郭建築などに使われる工法がここでも使われているのです。


居間の壁は白壁になっていますが、これは土壁の外に白の紙を張ったものです。昔は蛍光灯などではなく菜種油を使った灯を使っていたので全般的に暗く、そのため壁に白紙を張ることで少しでも部屋の中を明るく見せることができるのです。


火事の際に窓の扉を閉めるのですが、隙間には味噌を塗って火と煙が内部に入らないようにしたのです。このため味噌のはいった壺が傍らに置いてありました。



柳井の名産、佐川の甘露醤油と金魚ちょうちん

白壁通りの一角にある大きな蔵で昔ながらの製法で醤油を作っているのが佐川醤油店です。大きな蔵の建物の中にはいると、醤油の独特なにおいが鼻にはいってきます。


地下70mからくみ上げた伏流水を使い、今も昔ながらの巨大な桶を使って職人が作っています。


名物の甘露醤油は一度出来上がったしょうゆにもう一度麹を加えて再仕込みを行うという独特な製法で作られた醤油です。


ワインと同様にじっくり寝かせて、しっかり熟成させるという工程を経て、芳醇な味と香りをかもしだす醤油に仕上げます。


甘露醤油の由来は、その昔岩国藩のお殿様にこの醤油を献上したところ、味わったお殿様が「甘露、甘露」と感嘆の声をあげられたことからつけられたといいます。


蔵の中には大きな杉の桶がいくつもあり、しょうゆを製造する工程をその目で自由に見学することができます。


通りには金魚ちょうちんが軒を連ねてつるされており、とても街並みと似合っています。


この金魚ちょうちんは幕末のころ、柳井の商人だった熊谷林三郎が、青森のねぶた祭にヒントを得て子供たちを迎えるための提灯として考案したといわれています。


素材は柳井伝統の綿織物「柳井縞(やないじま)」の染料や、竹ひご、和紙などの身近な素材を使って作っていたそうです。


そんな金魚ちょうちんですが、今では柳井市のシンボルとして全国にも知られる存在になりました。


柳井縞は岩国藩が藩の財政を支えるために藩がバックアップして生産を奨励した柳井の伝統的名産品です。


岩国藩はこの柳井縞を藩独自の織物検印制度のもとで厳しく品質を保ってきました。このため柳井縞は柳井木綿として全国にその名が知られていました。


しかし残念ながら時代の趨勢で徐々に衰退し、大正末期にはその姿をいったんは消してしまったのです。


ところが先人からの贈り物とでもいいましょうか、1989年に一軒の民家から一台の機織り機(はたおりき)が見つかったのです。


これがきっかけとなり、柳井縞の再興の声があがり、現代の感覚を取り入れた新生の柳井縞が復活したのです。


夜参り行列と大名行列、2日間にわたる柳井天神春祭り


さてそんな時代情緒あふれる柳井の白壁通りの町並みですが、その柳井で2日にわたって行われた祭りの模様をお伝えしたいと思います。


21日の夜参り巡業は市内の人々の間で楽しむ前夜祭といった趣ですが、夜の街をゆっくりと進む行列の風景は幻想的で、とても非日常な空間と時間を演出していました。


柳井の夜の街燈とネオンの明かりの中を近世の大名行列が歩く姿は普段は味わえない異空間です。


夜参り巡業が終わると、次はカラッと晴れた日中に行われる古風で雅な大名行列です。


行列は先頭に高張提灯(たかはりちょうちん)衆、陣笠をかぶった先払い、打ち金棒衆、箱提灯、太刀持ち、小行司、神体を乗せた御車、神官、大行司などで構成されます。





神体を載せた御車とはつまりは道真公が乗ってらっしゃる車のことです。


その御車を挟むようにしてお子さんが演じられている黄緑色の着物を着た小行司、白の布を背中につけた大行司が馬に乗って行進していきます。



馬に乗った紫色や柿色の着物を着た子供は小丈夫で、今でいうと行列の副隊長の立場の人になります。


江戸時代の参勤交代はこのようなものだったのかなと思わせる再現度で、歴史ファンの方にはたまらないお祭りだと思いました。


金棒衆は金棒を地面に打ち付けながら歩くのですが、その時にでる”キャシャーン、キャシャーン”という音がとても印象的です。


先払いの「下に~下に~」という掛け声とともに、沿道の人々をひれ伏すように命令する様はかつての大名行列の威厳を思い起こさせます。


槍の先に毛がついた毛槍を持つ毛槍衆が「ソライ―、オーイー」の掛け声とともに踊りを披露し、最後に毛槍を投げる実演までが一区切りで、それが終わると一旦小休止になり行列を整えます。

浄財箱を持ち歩く少年に浄財をお渡しするご婦人がいました。


行列の最後尾には道化師の人たちが沿道のお年寄りや子供たちに飴などをくばって歩いていました。


柳井市は全国でも指折りの日照時間の長さを誇る街です。このため”太陽の恵みあふれる街”というキャッチフレーズもあるぐらいです。


しかしこの祭りが行われる4月下旬は例年雨の日も多く心配されていましたが、この日はとても天気が良く晴天に恵まれした。


子供たちは大人でも大変な暑さと衣装に弱りながらもがんばって行進してくれました。




この日は出店もたくさんでて、子供たちが楽しそうに金魚すくいなどをして遊んでいました。


白壁通りには骨休めができ、柳井ブランドとしても認定されているフジヤマ・コーヒー・ロースターズ、明治27年創業文房具店の木坂賞文堂などもあり、観光の際にはお立ち寄りください。



今回天神祭りを見逃した方も、8月13日には「柳井金魚ちょうちん祭り」が、今回の天神祭りを上回る規模で行われます。


白壁通りの金魚ちょうちんも8月の夏休みの間は点灯されて、白壁に赤い輝きが映ってとても幻想的な雰囲気を醸し出してくれます。


柳井はみかんと太刀魚(たちうお)の島、周防大島の入り口にあたる町でもあります。柳井港からは松山へのフェリーも定期運航されています。これからの季節、海と太陽と白壁の柳井を体験しにお越しください。

柳井市町並み資料館
住所
山口県柳井市柳井津金屋442
営業時間
10時00分~17時00分
定休日
月・木曜日、年末年始
主な客層
観光客
平均予算
無料
お問い合わせはこちら0820-23-2137